【2020.5更新】5月 リート市況まとめと今後の見通し。INVが98%減益など。
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2020.5 REIT市場全体まとめ&今後の見通し
REIT市場は2019年こそ堅調でしたが、2020年3月以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けて、非常にボラティリティの高い相場が続いています。
2020年3月には日銀による追加金融緩和策の一つとして、REITの年間買入枠倍増(900億円→1,800億円)が発表され需給面では若干改善されつつありますが、今後はホテルや商業施設、オフィスの実需面での変化も予測されています。
当面はREIT市場は不透明と考えられますので、REIT市場全体の2020年5月の動きを簡単に振り返り、来月以降の見通しの参考になれば幸いです。
東証REIT指数 5月終値は「1,701.03pt(前月比+7.9%)」
東証REIT指数(配当なし)は、4月末 の1,576.43ptから+124.60pt上昇し、上昇率は+7.90%となりました。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020.3.19の安値「1,145.53pt」からは+48.4%の大幅上昇となっています。
投資部門別売買動向(4月末)
東証が公表した2020.4末の投資部門別売買動向は次の通りです。
■2020年3月の売買主体
売り:銀行
買い:個人、外国人投資家
■2020年4月の売買主体
売り:外国人投資家
買い:個人、銀行
「個人」は2020年3、4月と2ヶ月連続の買い越しで買い意欲が旺盛とみられ、日本人の個人投資家の特性と言われる逆張り志向が表れています。
※ニッセイアセットマネジメントHPより
日銀の買い入れ
日本銀行が公表したJ-REIT買入額は「3月315億円」「4月200億円」でしたが、「5月95億円」と2020年3月に実施した追加緩和以前の水準に戻っています。
日銀としては、市場の混乱が落ち着きつつあるという判断で買入を抑えているのかもしれません。ただし個人的には、予断を許さない状況で、市場には警戒感が残っていると思います。
特に気になるのは、オフィス系REITについてです。
リモートワーク推進がどこまで普及するかは見通しづらく、これまで賃料収入は右肩上がりで堅調だったオフィス市況に不透明感が漂っています。
東京・丸の内や大手町といった一等地オフィスについては需要の急激な減退は考えにくいですが、それ以外の地域については需要が見込みづらく二極化が進むと考えられます。
仮に空室率が上昇するようであれば、賃料を下げてテナントを募集することになるので、賃料収入及び分配金の減少という流れが懸念されますので、ポジションを調整するなどの対応が必要だと思います。
個別銘柄について
インヴィンシブル投資法人(INV)大幅減配
5月11日にインヴィンシブル投資法人が2020年6月期の業績予想を再び公表しました。
2月に公表した業績予想に対し▲98%減益を見込み、1口当たり分配金は30円と非常に厳しい見通しでした。
これを受けて投資口価格は、5月11日終値30,900円から、翌日は▲19%の25,000円で寄り付きました。
公表されたIRを要約すると、
INVが保有するホテル83物件のうち73物件を、マイステイズ・ホテル・マネジメント(スポンサーのフォートレスグループ)が運用しており、このホテル運用会社が新型コロナウイルス拡大の影響を受け経営破綻の危機に陥りましたが、当投資法人が固定賃料の全額免除等の措置を講じてこれを回避する、とのことです。
【プレスリリース】
https://www.invincible-inv.co.jp/news/upd/140120200511407937.pdf
個人的には、スポンサーがもう少し援助をして、REITに対して固定賃料くらいは支払うべきではないかと思いますが、いずれにしても非常に珍しい措置となりましたので、今後もREITの歴史に残るIRとなりそうです。
※JAPAN-REIT HP
コロナ禍の影響が大きいホテル特化型・商業特化型、業績への影響未公表 4銘柄
新型コロナウイルス拡大の影響を大きく受けたREITでは、下記の銘柄で業績への影響が未公表となっています。
2020年3月以降の上昇相場では、株の持たざるリスクが大きく取り上げられていたこともあり、業績や影響を非公表とした銘柄のパフォーマンスが良かった傾向にあります。
しかし、前述のインヴィンシブル投資法人については、当初から減配が見込まれていたはずでしたが、プレスリリース発表の翌日には大きく値を下げました。
私自身も最近の上昇相場で盲目的に買いたい気持ちになりますが、市場で減配リスクが軽視される傾向を踏まえて、見送る又は大きく買い過ぎない等の対応が必要だと思います。
今後の見通し
買いは活発化か
政府は5月25日に、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言を全国レベルで解除しました。また、東京都については、公表されているロードマップのステップ2へ移行しており、徐々にテナントの営業活動再開の目途が立ってきたと言えます。
REIT市場については、依然として続く低金利の中で、REITの予想分配金利回りに着目した買いが活発化することも想定されます。
注目はホテル稼働率の開示
現状、大きな懸念となっているのはホテル・商業・オフィス系REITですが、直近の注目は6月22日-26日ころ発表されると思われる「ジャパン・ホテル・リート投資法人」の月次開示です。
仮に客室稼働率に回復の兆しが見られれば、市場に安心感を与えます。
なお、「ジャパン・ホテル・リート投資法人」については、2020年4月分のデータを用いて、将来の予想分配金毎に価値を算出した記事がありますので、よろしければご覧下さい。
以上、2020年5月のREIT市況まとめと見通しでした。この記事が皆様のお役に立てば幸いです。