【物件】福岡リート、2020.5にオフィスを取得。コロナ禍を考えるとやや強気の価格か。
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2020.5 福岡リートがオフィスを取得
福岡リート投資法人から、2020年5月29日に「東比恵ビジネスセンターⅢ」の物件取得完了プレスリリースが公表されました。
物件の規模自体は小さいですが、新型コロナウイルスの影響が注視されている時期ですから、物件の賃料や利回りをIRから調べました。
少しマニアックな見方になりますが、物件取得IRは
- 物件を高く買い過ぎていないか
- スポンサーに有利な契約になっていないか
等々を確認できる重要なリリースだと思います。
時間が無い方でも鑑定評価書の概要をチェックすることで、賃料や利回り感を把握でき、妥当な鑑定評価額で取得できているのか把握することが出来ます。
今後の物件取得リリースを読む際にも活かせると思いますので、ご参考になれば幸いです。
物件取得時は鑑定評価書が公表される
REITが物件を取得する際には、主に投資家保護の観点から「不動産鑑定評価書」のデータが公表されます。
今回のプレスリリースにも下記の通り記載がありました。
※福岡リート投資法人HPより
赤枠の鑑定評価額には、3,290,000千円と記載があります。
福岡リート投資法人の全物件の取得価格は、今回の取得分を合わせて約2,001億円となり、本物件32.9億円は1.6%程度のウエイトになります。
ポートフォリオとして見た場合の比率は大きくありませんが、新型コロナウイルス拡大後では初めての物件取得ですので、取り上げました。
REITと取得物件の概要
九州地域を主要投資対象とする地域特化型REITで、アセットは商業施設やオフィス、物流施設、ホテル等と幅広く、REIT市場において独特な立ち位置にある尖ったREITといえます。
格付については、R&Iより「A+(安定的)」、JCRより「AA-(安定的)」を取得していて、日本銀行も投資口を保有しています。
足元の投資口価格はNAV倍率0.8倍程度の水準で、2020年6月時点では投資家からの評価は高いとは言えません。
詳しくは下記のサイトが確認されることをお勧めします。
【価格】コロナ禍を考えると、やや強気。
REITが取得するような収益不動産の価格は、収益価格で形成されます。
馴染みのない言葉かと思いますが、この価格は運営収益から運営費用を引いた純収益を利回りで割り戻すことで算出されます。
物件価格=純収益 ÷ 利回り
この式の通りで、例えば物件価格を上昇させるには、
- 分子の「賃料(≒純収益)」を上げる
- 分母の「利回り」を低くする(例:5.0%→4.0%へ下げる)
の2通りしかありませんので、この2点に分解して価格の妥当性を検証したいと思います。
先ず結果としては、賃料・利回りとも新型コロナウイルス前の水準に近いという印象で、福岡リートとしては今後の市況を比較的強気に捉えているのかなと思います。
また、今回はスポンサー取引であり、スポンサーの力がやや強い取引という印象を持ちました。
ただ、福岡リートは地域の成長を取り込める珍しいREITですので、次の物件取得にも注目したいと思います。
賃料について
現在の賃貸借契約と鑑定評価書の概要を比較しました。
(賃料単価は開示されていませんので、推定となります)
入居して間もないテナントですが、鑑定評価書はさらに強気の賃料単価を想定しており、コロナ禍の影響が不透明な現状では強気の設定と見受けられます。
なお、”博多駅東口オフィス”の賃料単価で15,000~17,000円/坪が中心ですので、現行賃料16,000円/坪は”東比恵エリア”では高位な水準にあります。
利回りについて
本物件の鑑定評価書では、還元利回り 4.3%となっていますが、他の公表されているREIT物件と比較して水準を把握します。
上記と比較すると、 利回りがやや低いかなと感じます。
もちろん、賃料水準の程度によって利回りは変わるものなので一概には言えませんが、仮に横並びとした場合は利回りが強気水準という印象を受けます。
価格について
近年、不動産市況は好調で、福岡市内については全国的に見ても上昇率上位の部類に入りますから、福岡リートは物件取得に苦慮していると思われます。
一方、今回は新型コロナウイルス拡大の状況下での契約締結だったので、投資家保護の観点から状況が少し落ち着いてからの取得の方が、納得感が得られたかもしれません。
[ まとめ ] まず賃料と利回りを確認
不動産の賃料は通常は公表されない貴重な情報ですが、REITには公表義務がありますので有効に活用すべきです。
また、日本のREITはガバナンスの問題(スポンサーとの利益相反)がよく指摘されます。
たまにスポンサーの都合でREITに物件を押し付けているのではと勘繰りたくなる案件もあります。REIT投資家としては、高く買わされていないかを継続的にチェックする必要があると思います。
なお、今回は物件価格が強気という判断でしたが、実質的には福岡リートの分配金にはほとんど影響しません。
賃料収入の約30%はキャナルシティ博多という商業施設に依りますので、そちらの影響が圧倒的に大きいです。
今回の物件取得に関しては以上です。
今後は、過去に印象的だった物件取得なども纏めたいと思っています。
この記事が皆様のお役に立てば嬉しいです。