ひっそりとREIT研究

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【売上】天神のホテル、2020年4月売上▲84%に。博多も▲88%。回復は天神からか。

[目次] 

REIT保有ホテル 2020年4月の月次が開示された。

 

 

ジャパン・ホテル・リート投資法人といちごホテルリート投資法人から、2020年4月分のホテル月次が公表されました。

不動産業界ではホテルの稼働率ADRといった指標は、競合ホテルとの競争等において重要な要素であるため、中々公表されません。

 

近年はREIT市場の拡大に伴い、IR拡充の観点から有用な情報の開示が増えていますので、ご自身の投資方針を検討する上で参考とするべきです。

 

本記事では外国人観光客で賑わっていた福岡市の2大地区、「天神」「博多」のホテル月次開示から、2020年以降の新型コロナウイルスによる影響を考えます。

 

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福岡県 緊急事態宣言は4/7-5/14

 

福岡県の緊急事態宣言は2020年4月7日から5月14日までの計38日間でした。

地理的に韓国や中国に近接しており、外国人観光客による宿泊需要が旺盛でしたが、今回のコロナ禍により「天神」「博多」の観光客は激減しています。

  

「天神」ヴァリエホテル天神、「博多」ザ・ビー博多が開示有り

 

【概要】ホテル売上は、前年比で天神▲84%、博多▲88%

天神・博多のホテルで稼働率や売上の開示があるREITを探すと、ジャパン・ホテル・リート投資法人といちごホテルリート投資法人が該当しました。

  

なお、ジャパン・ホテル・リートは開示方法がやや特殊なため、博多地区では今回把握できたザ・ビー博多で検証しました。

2019年8月からのグラフで、どちらも大きく下落していますが、ザ・ビー博多の方が落ち込みが大きいことが分かります。

 

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この要因としては、ザ・ビー博多の立地と博多駅の特性だと考えていますが、まずはそれぞれのホテルの簡単な概要をご紹介します。

 

ヴァリエホテル天神(いちごホテルリート)

天神は百貨店やアパレル専門店等が集積しており、福岡の中心といっても過言ではありません。

また、歓楽街の中洲に徒歩でアクセスできることから、外国人宿泊客の大半は博多より天神に宿泊することが多いと思います。

 

ヴァリエホテル天神は駅西方のホテル激戦区に位置していますが、旺盛な宿泊需要を背景に安定的に稼働しています。

建物自体は1994年竣工のため古いですが、競争力に陰りは見られません。 

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ザ・ビー博多(ジャパンホテルリート)

博多駅天神駅と比較するとオフィス街のイメージが強いです。

博多駅周辺では福岡市の施策を背景に、築古のオフィスの建替えが進んでいて、土地の入札ではホテルデベロッパーが高値で落札しています。

現在、筑紫口(駅東口)ではアパホテルが数棟同時並行で建築中です。

 

ザ・ビー博多は競合ホテルが多数存する筑紫口から、さらに少し歩くので立地的競争力はあまり高くありません。売上は2019年11月から緩やかに減少しており、2020年4月売上は対前年比▲88%と苦戦しています。

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ちなみに、ジャパン・ホテル・リートは筑紫口にもう一棟、”オリエンタルホテル福岡博多ステーション”というホテルを保有して、筑紫口を出てすぐの好立地にあります。

こちらのホテルはザ・ビー博多と異なり、コロナ禍での営業方針はADRをできるだけ横這いとし、稼働率を大幅に落としているようです。

2020年4月のKPIは、ADR12,112円、稼働率5.7%でした。

ブランドイメージを大事に、リネン費などの運営コストを考慮した戦略だと思われますが、思ったより大胆な方針です

  

2019年9月の日韓関係悪化では▲10%程度

新型コロナの衝撃ですでに記憶が消えかけている方も多いと思いますが、2019年9月頃に日韓関係の悪化に伴い、福岡への訪日韓国人が減少しています。

 

それまで好調だったホテルの稼働率ですが、韓国人観光客の減少により上記ホテルを含め稼働率が▲10%ほど落ち込みました。

幸いなことに事態は1-2ヶ月ほどで収束しましたが、今回の新型コロナはもう少し長引きそうです。

当時の客足の回復については、上記ホテルを見ると「天神から回復し、博多も徐々に戻る」という傾向が観察できます。

 

[まとめ] 2020年4月は想定通り苦戦。回復は天神エリアからか。

 

過去の日韓関係悪化を教訓とすれば、宿泊客は天神エリアから回復していく傾向にありますから、月次開示を継続的に観察して、ホテル業界の回復をいち早く察知したいです。

 

2020年3月以降は、J-REIT投資口価格が乱高下していて、中でもホテル関連のREITの値動きの荒さは際立っています。

ホテル売上は分配金支払いの原資となりますから、定期的に確認して記事にしたいと思います。  

今回の記事が皆様のお役に立てば幸いです。

、●が理由で破綻し、不動産市場は長年にわたり低迷することとなります